12月の師走に私はオーストラリアの真っただ中、ノーザンテリトリーにいた。目的は、赤土の荒野に忽然と姿を現すエアーズロックを見るためである。世界最大級の一枚岩、地球のへそ、アボリジニの聖地、砂漠の中の赤色砂岩など様々な顔を持つエアーズロック(ウルル)は、実はその形と色彩、バックの広大な平原に立つ雄姿にその存在の意味を深めている。
朝4時起床。モーニングコールが鳴り、真っ暗な中をバスに乗り込む。エアーズロック・サンライズツアーの始まりである。到着した現地では、次第に朝焼けが始まり、岩肌を様々な色に変え、ついには鮮やかなサーモンピンクからオレンジ色へと変貌するエアーズロックの雄姿が出現する。その荘厳ともいえる朝日に映えるエアーズロックは、光を反射しつつ、月をも従え、荒野の真っただ中で、海中から隆起した太古の歴史を歌うように姿を見せるのである。数千にも及ぶ観光客は感嘆しつつ、口数少なく、その雄姿をカメラに収め続ける。地上高346m、周囲約9.4km、台形状の赤岩の何が人を引き寄せるのか。私はシャッターを切りつつ、何故、と自身に問いかけた。そう、それは灼熱の砂漠で生き抜いてきた孤高の存在を語っている。そして、その色は、限りなくやわらかなオレンジ色であり、そそり立つ台形状の壁が人に畏敬の念を抱かせる。つまりその姿を見る人の気持ちが岩に投影され、自分が生きている意味さえ映し出されそうなのである。
後日、ヘリコプターにて空からのウルルを眺めた。天気晴朗なれど風強し、バランスボードに乗っているがごとく小刻みに揺れる機体を、パイロットは何事もないように操縦する。飛び立ってすぐ、丸い地平線上にウルルが浮かび上がる。何と赤い塊なのだろう。広い荒野の真っただ中に落下した隕石みたいだ。周りは何もない。歩いて眺めた様子とは異なり、オーストラリアの大地に対するウルルの意味を示してくれる。どうして君はそこにいるのだ、その存在感の大きさは何故なんだ、と問いかけたくなる。ウルルは、やはり孤高の存在であるが故、人は自分の気持ちを投影しやすいのではないだろうか。空から見るとこんなにわかりやすいものだと感心する。是非、空からのウルルを見ていただきたいとお勧めする次第である。
カウントダウンの日のシドニーはまさにカーニバルでもある. 町中、人の渦に嬌声が響き、広場では大道芸人の声と音楽に満ち溢れている。また、どの国にも定着したかのような、新たな年を祝う花火が打ち上げられる。
それを見るため、街はさらに人でいっぱい、満タン状態だ。むろん南半球は夏であるが、さほど暑くなく、気温は20度程度で乾燥している。特に海岸沿いは何と気持ちの良い風だろう。四季がないとシドニー在住の人は言うが、1年を通じて安定した気候もいいのではないだろうか。
ダーリングハーバーやサーキュラーキーの2か所の港周辺は、花火会場でもあり大道芸も多く、散歩していると楽しいところである。サーキュラーキーでは、アボリジニの金管楽器であるディジュリドゥ(Didgeridoo, Didjeridu)と8ビートやテクノビートと組み合わせた演奏が聞こえてきた。約2メートルはある長い筒状の楽器をアボリジニメイクの奏者が、様々なビートに合わせ演奏する。この音が何とも言えないうねりと様々な破裂音を奏で、バックビートと融合させ、独特のボリュームを持った力強い音楽を作り上げている。思わず聞き入ってしまい、挙句にその場でCDまで買ってしまった。この楽器の音を出す方法は、管の一端に口を当てて唇の振動などを利用するものである。それ故、なんとなくモンゴルのホーミー(モンゴル語:Хөөмий (Khöömii)、フーミーとも)という喉から発せられる笛のような声に近いように思えた。多くの音が共存している上、瞬時に変化する。しかし、心地よい。ディジュリドゥはさらに迫力ある音が特徴である。この音には、人に対しての癒し効果があるという。今後、多種の楽器とのコラボがあるかもしれない。
ところで、シドニーカウントダウン花火は、20分に凝縮した打ち上げをするため、あっという間に終わるし、風下は煙で花火が見にくい状況となる。もう少し分けて打ち上げればいかがかと現地の人に尋ねると、これが花火だ、オーストラリアは隆盛なのだ、との返事であった。国の勢いを象徴した、まさに爆発である。
また日中、この季節の公園(ロイヤルボタニックガーデンズ、ハイドパークなど)の散歩は、心地よい風と世界中から路上演奏家の音楽であふれ、楽しく過ごせる。緑と花にも囲まれ、ベンチに座っていると、まるで何年もこの場所にいるかのように錯覚する。ハーバーブリツジ、オペラハウス、正教会、など公園周囲の借景も多く、写真スポットでもある。ブルーマウンテンやハンターバレーなど、何も感じないが、公園で過ごした時間は印象深いものでした。
シドニーでは、アボリジニアートの専門店がある。アボリジニと言っても多種族が存在するため、そのアートもやや異なる。自然や動物、人を現すものから円形、曲線の幾何学模様まで、色も多種である。KARLANGUという専門店に入ったが、店内はあふれんばかりの作品があり、あれこれ見ているうち、円形の抽象画を3つのキャンバスに描いた作品に目が止まった。日本に郵送してもらうことになり1件落着、マグカップもいいぞと調子に乗って買いましたが、帰国後、マグカップはもっとも好評なお土産となりました。実は、エアーズロックで、自分用にマグカップを買いましたが、アートとしてはこちらの方が斬新でいいと思います。但し、日常使用ではなく眺めて楽しむ逸品となりました。
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